平成24年8月4日(土)に第9回目の「スーパーコンピュータ「京」を知る集い」を財団法人石川県文教会館(石川県金沢市尾山町10番5号)において開催しました。
今回、216名の方にご参加いただきました。ありがとうございました。
各講師のプレゼンテーション要旨につきましては、こちらからご覧いただけます。プレゼン資料ついては下記のプログラムの中にPDFファイルで置きましたので、ダウンロードしてご覧ください。
なお、当日回収させていただきましたアンケート調査の結果はこちらをご覧下さい。次回以降の開催の際の参考とさせていただきます。ご協力ありがとうございました。
■概要
- (1)主 催:独立行政法人理化学研究所
- (2)開催日時:平成24年8月4日 土曜日 13時30分~16時(受付13時〜)
- (3)開催場所:財団法人石川県文教会館
( 石川県金沢市尾山町10番5号 ) - (4)定員:300名程度(先着順)
- (5)プログラム
13時30分~13時35分 | 挨拶 米澤 明憲理化学研究所計算科学研究機構 副機構長 |
---|---|
13時35分~14時 |
伊藤 聡 理化学研究所計算科学研究機構 コーディネーター |
14時~14時40分 |
坪倉 誠 理化学研究所計算科学研究機構 チームリーダー(北海道大学 准教授) |
14時40分~14時55分 | 休憩 |
14時55分~15時20分 | 「技術の壁を突き破れ!~スーパーコンピュータ「京」の開発~」(VTR)上映 |
15時20分~16時 |
秋山 泰 東京工業大学大学院情報理工学研究科 教授 |
■講演要旨
■パソコンで出来ること、スパコンでなければ出来ないこと:伊藤 聡
いまやパソコンは一人一台の時代である。パソコンによってインターネットが可能となり、世界中に友人を作り、また、移動中に映画を楽しむことも、ブログを書くことも、ゲームを楽しむこともできるようになった。パソコンは人々の生活を変えたと言ってよいだろう。しかし、パソコンが計算機であることを意識している人は少ない。一方、スパコンはまさに計算をするために特化した道具であり、我が国で開発された世界最高レベルの性能を誇るスパコン「京」は1秒間に1京回(1億の1億倍)の計算を行うことのできる最先端スパコンである。これによってきわめて複雑な現象を計算機の中で再現する“コンピュータシミュレーション”が可能となってきた。
シミュレーションとは模擬実験のことであり、試作を行うことなく、さまざまなケースを精度よく、また実験に比べてコストや手間をかけずに調べることができる。さらに実験や測定が困難な、あるいは事実上不可能な現象を解析することができる。とくにスパコン「京」はいろいろな種類のシミュレーションを効率的に処理できるよう設計・開発されている。
こうしたシミュレーション技術は私たちの生活を深く支えている。それどころか、いまやコンピュータシミュレーションなしには私たちの生活は成り立たないところまで来ている。スポーツ用品の開発や高効率太陽電池の材料探索、落としても壊れにくい電子機器の開発などごく身近な製品の開発にスパコンは活用されている。さらにコンピュータシミュレーションは時間の壁や空間の壁を越えて、自然のからくりを教えてくれる。たとえば我々の銀河系とアンドロメダ銀河(M31)は数十億年後に衝突し、その後十数億年をかけて一つの巨大銀河になっていくことを今の我々に教えてくれるのである。
パソコンを生み出した30年前の技術者たちは今のパソコンの使い方を想像すらできなかっただろう。パソコンの使い道はきわめて広い。飛び抜けた計算性能をもつスパコン「京」の使い道がさらに広く、その可能性は無限である。スパコン「京」を使う研究者の情熱が世界を変える、そういう時代が始まっているのである。
■スパコンを使った自動車空力設計と新たな謎への挑戦:坪倉 誠
自動車空力設計にコンピュータシミュレーションが導入されて、20年近くが経とうとしている。この間、シミュレーションは製品開発をより速くより安く実現するツールとして大きく貢献し、かなりの成功をおさめてきた。しかしながら既存のシミュレーション技術はいわば風洞実験の代替ツールであり、新たな視点に基づく革新的なものづくりに十分貢献しているとはいえない。即ち、新興国の台頭やますます強まる環境負荷低減の要求の中、日本の自動車産業が今後も国際的な競争力を維持していくには、今までの自動車空力設計のプロセスそのものに革新が求められている。
本講演では、日本が国際的に優位に立つスーパーコンピューティング技術を利用してその実現を目指している、自動車用次世代空力・熱設計システムの開発状況について紹介する。ここでは、自動車空力開発において大きな問題となっている、運動、熱、音との連成問題を主要課題とし、大規模数値シミュレーションを用いることで、今までの実験では難しかった非定常空力や熱、音の発生メカニズムの解明を目指す。システムの開発は北海道大学の他、東京大学、豊橋技術科学大学、東京都市大学が連携で担当し、その実証は日本の主要自動車メーカーが参入するコンソーシアムが担当し、強力な産学連携体制で取り組んでいる。
■スーパーコンピュータが解き明かす生命の不思議:秋山 泰
生命は、細胞、組織、器官、生体と階層的に構成された複雑なシステムであり、これらを理解することは21世紀の最先端の挑戦となっている。実際、DNAの二重らせんの直径は約20オングストロームだが、判りやすく1億倍した20cmに喩えると、ヒトの卵細胞の大きさは20km、1細胞のDNAの全長は20万kmにも相当する。構成部品のサイズと比べて超巨大システムと言えるし、部品の種類も膨大である。人体は、このような細胞が60兆個も集まって構成されている。
この研究分野では、パズルを解くような膨大なデータ解析や、精密なシミュレーションにスーパーコンピュータの存在が欠かせない。たとえば、ヒトのゲノム配列は一人一人違う個性を持っているが、その個性の源になっている個人差の部位の配列パターンと病気の成りやすさには関係があることが分かってきており、膨大なデータの組み合わせからもっとも筋の通った解釈を探すためにスーパーコンピュータが活躍している。また、身体が作られていく過程の解明、抗インフルエンザウィルス薬の開発、血栓症の形成過程のシミュレーションなど、多くの研究にスーパーコンピュータが利用されており、生命そのものの解明が進むことが期待される。
■アンケート調査結果
※216名中210名が回答
■お問合せ先
独立行政法人理化学研究所
計算科学研究機構 広報国際室 岡田 昭彦
TEL: 078-940-5625 FAX: 078-304-4964
E-mail: aics-koho[-at-]riken.jp (メールを送信の際は、[-at-]を@に変更してお送りください)
知る集いホームページURL: http://aics.riken.jp/shirutsudoi
印刷用チラシデータはこちらからダウンロードしていただけます。【pdf 463KB】