スーパーコンピュータ「京」を知る集い in 長崎(開催報告)

 平成25年1月26日(土)に第12回目の「スーパーコンピュータ「京」を知る集い」をNBCビデオホール(長崎市上町1-35 NBC別館)において開催しました。
 今回、278名の方にご参加いただきました。ありがとうございました。
 各講師のプレゼンテーション要旨につきましては、こちらからご覧いただけます。プレゼン資料ついては下記のプログラムの中にPDFファイルで置きましたので、ダウンロードしてご覧ください。
 なお、当日回収させていただきましたアンケート調査の結果はこちらをご覧下さい。次回以降の開催の際の参考とさせていただきます。ご協力ありがとうございました。

■概要

  • (1)主  催:独立行政法人理化学研究所
  • (2)開催日時:平成25年1月26日 土曜日 13時30分~14時(受付13時〜)
  • (3)開催場所:NBCビデオホール
            ( 長崎市上町1-35 NBC別館 )
  • (4)定員:300名程度(先着順)
  • (5)プログラム
13時30分~13時35分

挨拶

青山 伸
理化学研究所計算科学研究機構 副機構長
13時35分~14時

スーパーコンピュータ「京」で何ができるの? プログラムpdf

横川 三津夫
理化学研究所計算科学研究機構運用技術部門 部門長
14時〜14時40分

京速コンピュータ時代の医薬品開発 プログラムpdf

山下 雄史
東京大学先端科学技術研究センター 特任准教授
14時40分~14時55分

休憩

14時55分~15時20分

「技術の壁を突き破れ!スーパーコンピュータ「京」の開発」(VTR)上映

15時20分〜16時

スーパーコンピュータ「京」で国際産業競争に勝つ! プログラムpdf

伊藤 聡
理化学研究所計算科学研究機構 コーディネーター

■講演要旨

■スーパーコンピュータ「京」で何ができるの?:横川 三津夫

 スーパーコンピュータは、足し算や掛け算が一般のパソコンよりも桁違いに速いコンピュータで、主に科学技術計算に使われています。スーパーコンピュータを使うことによって、ものすごく複雑な現象が分かるようになってきました。たとえば、地球温暖化や宇宙の進化などの時空間の大きな現象、エンジンルーム内の燃焼や身体の中のたんぱく質の動きなど超短時間のミクロな現象,実験室では再現出来ない現象などを、計算機シミュレーションという方法で、我々の目に見える形にしてくれます。
 我々が開発した「京」は、1秒間に1京回(1兆の1万倍)の加減乗算が可能な世界でトップクラスの計算性能を持つスーパーコンピュータです。「京」の開発では、一つのCPUの計算性能を出来るだけ高くすると同時に、8万個以上のCPUを高速に接続し協調させて動作させる技術が必要でした。このため、CPUは45ナノメートルの半導体プロセス技術という超微細加工技術を用いて製造され、またTofu(Torus Fusion)と名付けられた6次元接続のインターコネクト技術を採用しました。
 計算科学研究機構(神戸)に設置された「京」は、現在、多くの研究者やアプリケーション開発者によって利用され始めました。「京」の利用により、我々の知らない世界、これまで分からなかった現象が見えるようになり、我々の生活に役に立つ成果が得られるものと期待しています。

■京速コンピュータ時代の医薬品開発:山下 雄史

 従来、病気に効く物質を自然の中から探し出すということが、新しい薬を作るということでした。それが、近年の技術の進歩により、人間の手で薬を設計するということが可能になってきています。特に、病気の原因となるタンパク質の形を原子レベルで明らかにして、その形に合うように薬を設計していくといった薬開発手法も出てきました。実際、インフルエンザの薬として知られるタミフルも、こうしてデザインされたものです。それでもまだ、新しい薬を作り出すのに10年以上の時間を必要とします。この開発時間をスーパーコンピュータで少しでも短縮しようというのが、我々の研究プロジェクトの目標です。
 人間の体にはたくさんの水があり、この水の中でタンパク質はクネクネと動き、様々な働きをしています。したがって、タンパク質の形だけではなく自然な動きを考慮に入れることが、「賢い」薬作りになると考えられます。実際、私たちは、コンピュータでシミュレーションすることでタンパク質の自然な運動を考慮する薬作りの方法を提案しています。この方法は、地球シミュレータ級のスーパーコンピュータでも数ヶ月かかる計算なので、これまであまり実践的ではありませんでした。(通常のパソコンを1台しか使えないとするならば、数百年かかる大変な計算量です。)しかし、京コンピュータの登場で、数日で計算結果を得ることができるようになり、実践応用への期待が高まってきました。私たちは、この方法で、実際にがんの薬を作ることに挑戦し、スーパーコンピュータで薬開発が可能であることを実証しようとしています。成功すれば、難病を持つ患者さんの希望になると同時に、熾烈な薬開発の国際競争で日本がリードするイノベーションにもなると考え、日々、研究を進めています。

■スーパーコンピュータ「京」で国際産業競争に勝つ!:伊藤 聡

 かつて、我が国は世界最先端のものづくり立国であった。しかし、様々な要因から現在の我が国の企業は苦しんでおり、日本の国際競争力ランキングも低下し続けている。しかし、高い国際競争力を有しているものがある。それは科学インフラである。
 昨年の9月に本格稼働を開始したスーパーコンピュータ「京」は世界最高レベルの計算処理能力を産官学あらゆる分野の研究者・技術者に提供している。この力をフルに生かすことがいまの日本にとって大変重要であるが、そもそもスパコンはどのように産業界では使われているのであろうか?
 ものづくりの現場では企画設計から試作を経て、量産品が製造される。このプロセスの途中において、設計・試作段階で最初の設計通りにはならない、予定性能が出ないなどいろいろな課題が生じる。これをすべて調べていては開発期間がかかりすぎるし、その結果、市場投入の時期が遅れれば、競争力の全くない製品となってしまう。さらに、市場に投入したのちに問題が起きれば、大きな損失となる。このような設計開発段階での後戻り工程をなくし、市場投入後に問題を起こさないよう、考えられるすべてのケースを、スパコンを使い徹底的にかつ迅速に検討・検証することができる。このようなデジタルエンジニアリングにものづくり立国の再興がかかっている。
 具体的な事例として、自動車や新幹線のような我が国が強い競争力を持っている産業分野、航空機産業や医療関係のようにこれから成長が期待されているにもかかわらず、十分な競争力を持っていない分野を取り上げる。我が国が強い分野はその強さをさらに伸ばして、その結果、周辺に関連する多数の産業を生み出すことが期待される。また、成長の期待される分野に参入するには、すでに先行する企業のあるところを狙うのではなく、新しい発想で新市場を切り開く必要がある。スパコンはその時の大きな武器となるはずである。
 国際産業競争力の源は研究者・技術者の独創的な発想・アイディアである。それを具体化する術がなければ、そのアイディアがいかに優れていても、夢で終わってしまう。スーパーコンピュータ「京」はそうした研究者・技術者のアイディアを形にすることによって、夢を現実のものにする力を持っている。スーパーコンピュータ「京」を我が国の産業界が世界に先駆けて徹底的に使いこなすことで、この厳しい国際競争を勝ち抜くことができるだろう。

■アンケート調査結果

※278名中253名が回答

Q1.性別を教えてください。

Q2.年齢を教えてください。

Q3.ご職業を教えてください。

Q4.どちらからお越しになられましたか。

Q5.「京」を知る集いの開催をどこでお知りになりましたか。(複数回答)

Q6.講演内容について

Q7.開催時間について

■お問合せ先

独立行政法人理化学研究所
計算科学研究機構 広報国際室 岡田 昭彦
TEL:078-940-5625 FAX:078-304-4964
E-mail:aics-koho@riken.jp (全角を半角に修正後お送りください)
URL:http://aics.riken.jp/jp/library/shirutsudoi

印刷用チラシデータはこちらからダウンロードしていただけます。【pdf 369KB】