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「京」のあゆみ -その2

K computer Newsletter No.4 : 「京」のあゆみ

「京」の開発は、どのように進められたのか?
今号では設計から試作・評価・製造にむかう 段階で起きた出来事を紹介します。

中間評価

設計から製造に移行する節目となる2009年4月から7月にかけて、文部科学省による「京」に関するプロジェクトの中間評価が実施されました。ここでは、プロジェクト発足時の目標であった

・LINPACKで10ペタフロップスを達成する(2011年6 月のスーパーコンピュータサイトTOP500(※1)でランキング第1 位を奪取)。
・HPCチャレンジ賞(※2)4項目において最高性能を達成する。

が実現できるかどうかが確認されました。
前号でお話したように、「京」はスカラ部とベクトル部から構成される複合システムとして設計されていましたが、この中間評価では目標達成が困難であること、複合システムとして性能が十分でないことが指摘されました。これを受け、我々は最適なシステム構成の検討を始めました。 その矢先……

※1 TOP500:巨大な連立一次方程式を解く速度を測定する「LINPACK」というプログラムの結果をランキングするもの。毎年2回(6月・11月)に公表されている。2011年6月、「京」は第1位を獲得した。(計算科学の 世界no.1京のあゆみ番外編)
※2 HPCチャレンジ賞:スパコンの性能を、4つの異なる視点から評価するもの。2012年11月、「京」は4項目すべてで最高性能を達成した。(計算科学の世界 no.2 京のあゆみ番外編2)

NEC・日立チームの撤退と設計変更

ベクトル部を担当していた NEC が、世界的な経済不況の影響を受け、本プロジェクトからの撤退を表明したのです(これに伴い NEC と共にベクトル部の開発を担当していた日立も撤退することになりました)。 我々は、中間評価の指摘も踏まえてシステムの再検討を行い、スカラ部のみでも目標性能が達成できると考えました。そして、複合システム構成からスカラ単一のシステム構成への変更を決めました。

「2位じゃダメなんですか?」

2009年11月に行われた行政刷新会議の事業仕分けにおいて、「京」プロジェクトは「予算計上見送りに近い縮減(事実上の凍結)」と判定されました。その後、パブリックコメント等を経て、利用者側の視点に立つものとしてプロジェクトの見直しが行われた結果、「京」の開発が継続されることとなりました。新たに見直されたプロジェクトでは、

・利用者の視点に立ったスーパーコン ピュータ開発を行う。
・全国のスーパーコンピュータを相互に接続することにより効率的なスーパーコンピュータ利用を推進する(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの構築)。

が大きな柱となりました。

製造~搬入開始

2009年12月、システム製作を担当している富士通(株)では、実機の約1000分の1規模のシステムを試作し、量産に向けてさまざまなテストを実施しました。そこで想定通りの性能が出ていることが確認され、2010年度から「京」の量産が開始されました。そして、2010年9月29日、ついに最初の筐体が計算科学研究機構に搬入されました(写真)。

( 運用技術部門 システム運転技術チーム 村井 均 )

最初に搬入された筐体

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