「京」のあゆみ -番外編2-
「京」のあゆみ -番外編2-
2011年11月にアメリカ・シアトルで開催された国際会議で、「京」は演算性能において再び世界一に輝くとともに、多くの賞を受賞することができました。そこで、今号も番外編としてそのようすをお伝えします!
International Conference for High Performance Compurting, Networking, Storage and Analysis(SC)は、スーパーコンピューティングに関する最も大きな国際会議です。毎年1万人以上の研究者や技術者が集い、多くの発表や展示が行われます。また、この分野における重要な賞の発表も数多く行われます。今回、「京」はたくさんの賞を受賞しました(右表)。中でも「京」の活用に大きく関係する「ゴードン・ベル賞」と「HPCチャレンジ賞」をご紹介します。
スパコンの実際的な応用における計算性能を競う賞で、TOP500のようにあらかじめ性能測定用のプログラムが決められているのではないことが特徴です。特に最高性能賞は大変名誉ある賞で、日本の研究チームが受賞したのは2004年の「地球シミュレータ」を用いた地磁気ダイナモの研究以来、7年ぶりのことです。
受賞した研究のタイトルは「シリコン・ナノワイヤ材料の電子状態の計算」です。シリコン・ナノワイヤはシリコン原子でできた直径が10ナノメートル※ほどの細長い線状の物質で、次世代の電子部品材料として有望視されています。「京」を使うことで、10万個ものシリコン原子でできたナノワイヤ中の電子の状態を厳密に計算できるようになりました。電子のふるまいを、これだけの数の原子からなる物質について厳密に計算したのは、世界で初めてのことです。この研究は「京」を使うことでナノメートルサイズの材料を開発するための高精度なシミュレーションが可能となり、その結果が今後の電子部品材料の開発に大きく貢献できることを世界に示しました。
※ ナノメートル:1ミリメートルの百万分の1の長さ
HPCチャレンジ賞とは、スパコンの性能を4つの異なる視点から評価するもので、「京」は全体の2割のシステムを使い、4部門とも世界最高性能をマークしました。ここでは計算性能のほか、ネットワークやメモリアクセスの速さなどが一度に測定されます。「京」は汎用スパコンとしての総合的な能力においても世界一となり、いろいろな分野のシミュレーションに役立つことが証明されたのです。
今回のSCで基礎性能から実用まで「京」の能力が広く認知されるようになりました。これからは「京」を使って世界をリードする研究成果を生み出すときです。「京」の完成を間近に控え、私たち開発スタッフもラストスパートでがんばります。
(次世代スーパーコンピュータ開発実施本部 開発グループ 黒田明義)
2012年01月31日発行