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データ同化研究チーム

K computer Newsletter No.7 : 研究チーム紹介

現実世界をコンピュータの中に再現するには、シミュレーションのためのプログラムと、実際の測定データが必要になります。例えば、みなさんが毎日テレビなどで目にしている天気予報は、気象庁が観測をもとにスーパーコンピュータでシミュレーションを行った結果に基づいています。

「観測をもとに」という部分は意外に難しいことです。というのも、観測には誤差がつきもので、シミュレーションもさまざまな理由で完璧ではないからです。そこで、天気予報では一定時間ごとにシミュレーション結果と観測データの情報を最適に組み合わせて、誤差が小さい「真実」に近い状態を推定します。これが、データ同化です。

天気予報の場合、シミュレーションの誤差は、毎日、場所ごとに変動します。例えば、台風が発生して日本に近づいてくると、台風の進路が定まるまでは天気予報がコロコロ変わったりします。つまり、シミュレーションに大きな誤差(不確実性)があります。この誤差の変動を正しく見積もることができれば、シミュレーションが信頼できる部分はそれを信じて、信頼できない部分は観測データを有効に取り込んで、より正確な予測を行うことができるのです。

私たちは「アンサンブルカルマンフィルタ」というデータ同化手法を使っています。これは、少しずつ異なるシミュレーションを一度にたくさん行い、そのばらつきをもとに予報の誤差を計算する方法です。私たちのチームは「京」を用いて、最新の手法で天気予報の精度を高めることをはじめとして、さまざまなシミュレーションと実測の融合を実現したいと思っています。

(大塚 成徳[しげのり])

三好建正チームリーダー(左から2人目)とチームのメンバー

データ同化は観測データとシミュレーションの間に橋をかける役割をする

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