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量子系物質科学研究チーム

K computer Newsletter No.3 : 研究チーム紹介

当研究チームでは、スーパーコンピュータ「京」をはじめとした高速な計算機環境を利用して、物質の性質(物性)をミクロなレベル(原子・電子)から明らかにすることを目的として研究を行っています。また、そのために、「京」に最適なシミュレーション方法の研究開発も行っています。

私たちの周りには様々な物質が存在し、多様な物性が見られます。これは物質のバリエーションが豊富ということに加え、ある一つの物質でも環境によって異なる性質を示すことを意味しています。例えば、水は冷やすと氷(固体状態)になりますし、多くの金属は冷やすと電気抵抗が0の「超伝導」状態となります。このように、同じ物質が温度や圧力といった環境によって異なる状態に変化することを「相転移」と呼びます。通常の物質中にはおよそ10の23乗個という途方もない多数の原子が含まれていますが、このまさに「多数」であることで初めて相転移という現象は起こります。ある著名な物理学者はこれを"More is different."と表現しました。これはつまり、数が多い事で質的に異なる状態が生じうるということです。

多数の原子が集団として見せる性質を理解することは、たとえそこを支配する物理法則が既知であったとしても、そう単純ではありません。特に原子がお互いに強く影響を与え合っているような場合を調べるためには、高速な計算機を用いたシミュレーションが不可欠な研究手段となります。今はまだ物性を理解することが目的ですが、それを通じて将来的には、望みの物性を持つ物質を計算機の中で「設計」することがこの分野の研究者の夢です。

(大塚 雄一)

柚木 清司チームリーダー(右から2人目)とチームのメンバー

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