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離散事象シミュレーション研究チーム

K computer Newsletter No.6 : 研究チーム紹介

最近、携帯電話の通信記録などから人々の社会活動について解析されるようになってきました。我々の社会には、携帯電話のような通信網、道路や鉄道のような輸送網など、多くのネットワーク構造が見られます。これらは単純化すると、図のように線と結節点からなる「グラフ構造」になります。このようなグラフ構造は「離散数学」と呼ばれる分野の主要な研究対象なのです。我々のチームでは、人間社会のシミュレーションをめざして、離散数学的な問題を効率的に処理する技術の開発を行っています。

社会シミュレーションはすでに交通渋滞の予測などに応用されています。では、「京」を用いると、どのようなことが新しく可能になるのでしょうか?

実は、他の科学分野とは違い、社会の動きを決める法則はまだ完全にはわかっていません。科学的な法則を知るには、同じ条件で何度も実験や観察を行う必要があります。これは現実の社会では不可能ですが、「京」を使えば同じ条件のシミュレーションを数多く行うことができます。

また、社会シミュレーションでは、計算機の中で人や車を表す「エージェント」が道路のようなグラフ構造の上を動き回ります。強力な計算機を使えば、より高度な人工知能をもったエージェントによるシミュレーションが可能です。人間とは違った知能をもったエージェントたちは、人間社会とは性質の異なる社会をつくる可能性さえあります。

社会シミュレーションは科学として成り立つか? 我々の社会とは異なった形態の社会は存在するか? 将来、これらの問いに答えることができるようになるかもしれません。

(稲岡 創[はじめ])

伊藤伸泰チームリーダー(右端)とチームのメンバー

道路は単純化すると、線と結節点からなるグラフ構造である。

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