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「京」まめ知識 -vol.2-
柱のない計算機室

K computer Newsletter No.7 : 「京」まめ知識

「京」の本体が置かれている計算機室には柱が1 本もありません。なぜ、柱がないのでしょうか。柱がなくても大丈夫なのでしょうか。

計算機室に柱がないのは、計算機を自由に配置できるようにするためです。 「京」のような超並列型スパコンでは、とてもたくさんのCPUをつなげて性能を向上させています。ですからCPUどうしの間の通信にかかる時間も計算速度に大きく影響します。通信用のケーブルはなるべく短く、なるべく同じ長さにしたほうがいいのです。もし柱があると、そこに計算機を置けず、柱を迂回するためにケーブルを長くする必要も出てきます。これでは、計算性能が落ちてしまいます。

そこで、計算機室は「柱なし」でつくることにしました。しかし、計算機室は3000㎡と、日本最大級の体育館なみの広さです。しかも、計算機室は3階にあります。これだけ広い空間を柱なしでつくるためには、さまざまな技術の投入が必要でした。

その1つは「免震構造」です。柱は、地震で建物がひねられて壊れるのを防ぐ働きをします。柱なしでも地震に耐えられるようにするには、建物のゆれを小さくする必要があります。そこで、計算機棟は免震構造でつくりました。建物全体は49個もの積層ゴム免震装置で支えられており、2種類の制震装置(鉛ダンパーとU型鋼製ダンパー、各28個)も設置されています。

積層ゴム免震装置

もう1つは、「橋梁技術」です。計算機室の床はトラス橋(三角形を繰り返す構造で支えられている橋)と同じ構造で支えられています。幅50m、長さ60mの計算機室の床が橋の渡る部分、見学者ホールとその反対側の壁がそれぞれ橋のたもとにあたります。「京」の設置されている計算機室は、計算科学の未来へと渡る「橋」なのかもしれませんね。

計算機棟の断面図。黄色の部分はトラス橋と同じ構造をとっている

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