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スパコンのことば -その5-
モデル=方程式系

K computer Newsletter No.10 : スパコンのことば

自然現象を計算で再現するためには、その現象に関わる物理学や化学の法則を理解し、それらの法則を方程式の形で表す必要があります。しかし、現象に関わるすべての法則を方程式にして解こうとすると、計算量が膨大になってしまい、現実的ではありません。そのため、重要なものを基本に据え、どのようなものを付け加えるかを取捨選択します。こうしてできあがった方程式の集まり(方程式系)を「モデル」と呼んでいます。方程式系を解くためのプログラムまでを含めてモデルと呼ぶのが普通です。

大気シミュレーションの場合には一般に、大気の流れを、熱流体が従うべき質量保存則・運動方程式・エネルギー保存則の方程式で表すほか、水の相変化(氷、水、水蒸気の間の変化)、太陽の放射による熱流入などを方程式で表します。そして、これらの方程式から、ある時点における各格子点の気温、気圧、湿度、風速・風向などを求める方程式を導くのです。

今回、宮本さんたちが用いたモデルは、全球雲解像モデル(NICAM)というシミュレーションプログラムです。例えば気温を表す方程式には、移流(気温が流れて移ること)と拡散(気温が周りに広がること)に加え、太陽の熱による放射、雲の凝結という水の相変化の項が含まれています。

現在、宮本さんたちのチームではポスト「京」に向け、新たなモデルの構築が始まっています。実は、現在のモデルのままで、より高い解像度のシミュレーションを行うと、格子間隔870mでは省略できた作用を無視できなくなることがわかっています。そこで、拡散に関係する作用の項を新たにモデルに追加することが検討されています。「京」で得られた高解像度計算の結果が示すように、シミュレーションの精度が上がることで、自然現象への理解が深まるとともに、モデルも高度化されていくのです。

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