計算科学の世界トップページ

研究者に聞いてみよう! 第3回

複合系気候科学研究チーム
佐藤 陽祐 基礎科学特別研究員

K computer Newsletter No.11 : 研究者に聞いてみよう!

雲に魅せられて──自然豊かな街に生まれ、勉強よりも遊び・スポーツっ子だった佐藤さん。やがて都会に出た彼の中で、子どものころから感じていた「目の前の物事を解明したい」という思いが強くなっていき、気象研究を始めました。雲の性質に関わるエアロゾルに焦点を当てて「京」でシミュレーションを行い、エアロゾルが雲に与える影響を理解しようとしています。32歳と研究所の中では若く、親しみやすい人柄でもある、気象科学の将来を担う佐藤さんにお話をお伺いしました!
(兵庫県立洲本高等学校有志)

※エアロゾル:大気中に漂う、ちりなどの小さな粒子。雲をつくる水滴の核となる。

  • Q.なぜこの職業を選んだのですか?
  • A.高校時代に物理が得意でした。普段見ている空や雲などの景色に覚えた疑問を解き明かして、さまざまな人に知ってほしいと思っていました。一時期は教師を目指していたこともありますが、研究したいという気持ちも強く、研究者になりました。
  • Q.一般人に知ってほしい研究者の苦労はどういうものですか?
  • A.基本的には、苦労や努力を知ってほしいとは思いません。ですが、研究に限らずどんな世界でも陰で頑張っている人は大勢います。その人たちがいるからこそ僕たちの生活が成り立っているということを、自分の力で調べ、知ってほしいです。自分の力で得た情報にこそ、意味があると思います。
  • Q.研究職で知られていないことは何ですか?
  • A.世間からは、変な人がたくさんいるかのように思われていますが、そんな人たちはほんの一部だと思います(笑)。
  • Q.失敗談はありますか?
  • A.英語をもっと勉強しておくべきでした。他国の研究者と話すときや論文の読み書きに、英語力は必須です。高校時代に国語や英語といった語学の勉強を怠ったことが、論文を書くときに大きな支障になったので、理系科目以外もしっかり勉強してください。
  • Q.好きな言葉は?
  • A.「日はまた昇る」。理由は、「つらいことがあっても、また日は昇って明日になる」とい意味だけでなく、「何もしなくても日は昇っていく」。つまり「何もしなくても世界は動いていく、そんな中で何もしないままではもったいない」という意味もあるからです。
  • Q.仕事で得たものは何ですか?
  • A.研究者は2、3年で転勤することも多いですが、その中でさまざまな研究をしている人と出会い、新たな知識やつながりを得ることができました。
  • Q.研究の最終目標は何ですか?
  • A.エアロゾルはCO2のような温室効果ガスによる温室効果を打ち消す効果があるといわれています。その一方で、排気ガスなどのように人為的に生まれることもあるので、人間活動によって地球のエネルギー循環を変化させる効果もあります。そういった未解明の効果を明らかにして、広く社会に知らせることで、大気汚染の低減に役立てられたらいいと考えています。
  • Q.研究のプロフェッショナルとは何ですか?
  • A.プライドと責任を持って仕事に臨むことです。研究職では自分しかその研究をしていないということが多いですが、それを孤独に感じることなく、世界でこの研究をしている人は数少ないんだという誇りと責任を持って一人でやり切る強さは大切です。それと、自分の研究が過失を犯してしまったとしてもそれにきちんと責任を持てることも、大人として、プロとして大事です。

プロフィール
さとう・ようすけ。岐阜県立関高等学校卒業。名古屋大学理学部卒業後、東京大学大学院修士課程修了。東日本旅客鉄道株式会社を入社1年後に退職し、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。趣味はバスケットボール。

洲本高校の皆さん

インタビューを終えて

普段お会いする機会がない研究者へのインタビューを通して貴重なお話を聞くことができ、有意義な体験ができました。僕たちが思い描いていた研究者像と違って、研究の紹介にユーモアを交えて話してくださったりする親しみやすい人柄に、意外な一面を感じました。「日はまた昇る」という言葉は、希望とともに、大切な日々を悔いなく生きるように戒める言葉であり、大事をなすには自分の信念を持って日々コツコツと目標に向かって努力することが大切なのだと感じました。最後に、今回の取材に携わってくださった方々に感謝致します。お忙しい中、時間を割いていただき、本当にありがとうございました。

(取材・執筆:青木淳一郎、蔭山信二、亀田航平、仙﨑直輝、谷上 周、玉置 幹、萩原健登、松原宏太)

MENU