計算科学の世界トップページ

世界に誇れる計算科学の拠点をめざして

計算科学研究機構 機構長 平尾公彦

K computer Newsletter No.1 : 機構長あいさつ

「京」の共用開始を来年秋に控え、私たちは、運用制度や研究環境の整備に全力をあげています。計算科学研究機構は計算科学の拠点の中核となり、共同研究を推進するとともに、研究者と情報の行き来を円滑にする役割を担っています。「京」のシミュレーション能力を広く活かすため、すでに5つの分野で「戦略プログラム」が立ち上がっており、多くの大学・研究機関が参加しています。

まず「分野1: 予測する生命科学・医療および創薬基盤」では、タンパク質、細胞、臓器といったさまざまなレベルで生命現象を理解し、医療や創薬につなげていきます。次に「分野2: 新物質・エネルギーの創成」では、物質が示す性質を予測し、新しい量子相の発見や、レアメタルの代替材料、エネルギーを効率的に生み出す新素材などの開発につなげます。「分野3: 防災・減災に資する地球変動予測」では、気候変動の影響と、地震時の津波や建物被害などを予測し、防災対策に役立てたいと思っています。一方、「分野4: 次世代ものづくり」は、より優れた製品の設計・生産にシミュレーションを活かし、産業界の国際競争力の強化に貢献するのが目標です。最後の「分野5: 物質と宇宙の起源と構造」は、宇宙137億年の歴史の解明や物質の究極である素粒子研究に挑みます。

「京」を使ってこのような「計算科学」の研究を進めるには、「京」の威力を最大限に引き出す「計算機科学」の研究が欠かせません。計算科学、計算機科学の研究者の連携を図るのも、私たちの役目です。

また、研究テーマの中には、気候変動をはじめ、自国だけで解決することが難しい課題もたくさんあります。そこで、私たちと同様にスーパーコンピュータの開発と利用を進めている世界各地の大学・研究機関と連携し交流を深めています。将来は、アジアのリーダーとしての役割も求められると考えています。

「京」が研究者にとって魅力ある施設となり、科学技術の広範な分野において活用されることが何よりも重要です。分野、組織、国境を越えて多くの研究者が集い、その交流の中から有用な情報を得ることで研究は加速されます。

そして、このような連携は、将来のエクサスケールスーパーコンピュータ(「京」の100倍の性能)の構築にも活かされるはずです。計算科学、計算機科学の連携によるCo-Designでエクサスケール時代のスパコンの開発研究も推進したいと考えています。 このニューズレターを通じて、私たちの活動を知り、応援していただければ幸いです。

計算科学研究機構 機構長 平尾公彦

MENU