「京」のあゆみ -番外編-
「京」のあゆみ -番外編-
このコラムでは、「京」の開発の歴史をご紹介する予定です。その前に、今号では、今年6月のInternational Supercomputing Conference(ISC)で、「京」がスーパーコンピュータ性能ランキングTOP 500※1の第1位を獲得したようすをお伝えします。
ISCはスーパーコンピューティングに関する国際会議で、毎年ドイツで開催されています。TOP 500の発表だけでなく、研究発表、企業や研究機関による展示などが行われる一大イベントです。今年は、昨年に引き続きハンブルクのCongress Center Hamburgにおいて6月19〜23日の日程で開催され、2000人を超える人が参加しました。
20日のオープニングセッションで第37回目のTOP500リストの発表があり、8.162ペタフロップス※2の性能を達成した「京」が第1位を獲得しました。ちなみに上位10位は表の通りです。
今回の「京」の世界一獲得にあたっては、
・2位の3倍以上という圧倒的な実効性能
・93%という他の追随を許さない高い実行効率 ※3
・28時間の高負荷連続稼働が可能な高耐久性(上位の他のコンピュータでは2〜20時間程度)
・世界最高水準の低消費電力性
などが高く評価されました。「京」は2012年秋の運用開始に向けて開発途上にあり、これらの成果は、68,544個のCPUを用いた部分システムによって達成されたものです。
また、計算科学研究機構の展示ブースには、「京」のCPUの製造に使われる円盤状の半導体ウェハと、「京」の重要な部品であるシステムボードが展示され、「京」や計算科学研究機構の活動に興味をもつ多くの方でにぎわいました。
「京」の部品の中には、今年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震で被災した東北地方の工場で製造されているものもあります。被災後の大変厳しい状況の中、「京」の部品製作を遂行してくださった各企業のご尽力なくしては、今回の成果を達成することはできませんでした。関係者の皆様に心より感謝いたします。
さて、次回からは、「京」開発の歴史を、プロジェクトの始まりから順にお話ししていきます。
※1、※3 渡辺氏インタビューの注参照。
※2 フロップスは1秒間に行う計算の回数を表す単位。ペタは10の15乗。
(次世代スーパーコンピュータ開発実施本部 開発グループ 村井均)
2011年10月21日発行