プロセッサ研究チーム
プロセッサ研究チーム
当チームでは、「京」のような高性能な計算システムを支えるカギとなる要素の一つであるプロセッサ(演算装置)の研究を行っています。また、「京」のプロセッサには、高速な計算に向けた特別な機能が入っています。「京」から性能を十分に引き出すためには、プロセッサの構造を熟知していることが必要です。これらの知識を活かして、「京」の上で動くアプリケーションの高性能化に貢献します。
現代の半導体集積回路(LSI)では、一つのLSIに数十億個のトランジスタを詰め込むことが可能になっています。これらを全て計算に用いれば、理論的には数千回の計算を同時に行うことができます。しかし、実際のアプリケーションでは、数千個の演算器を並べたとしても同時に使うのは難しく、トランジスタ全てを計算に使うわけにはいきません。実際のプロセッサはこういったバランスを考えて性能を引き出せるように作られており、例えば「京」のプロセッサSPARC64 VIIIfxでは、64回の計算を同時に行える程度です。これをさらに向上させるためには、データを動かすための半導体回路の電力、時間、面積を下げていくことが重要です。当チームでは、例えばタンパク質の動力学シミュレーションなどの限られた応用分野に限定することでこうした問題を解決し、トランジスタをなるべく多くを計算に割り当てて性能の限界に挑戦するための技術開発を行っています。特に、今後はこれまでコンピュータ上に別々の部品として搭載されていたネットワーク、メモリ、演算装置などを一つのLSIに統合したシステムオンチップ(SoC)技術が高性能化のために重要です(図)。現在、理化学研究所生命システム研究センターで開発を進めている分子動力学計算専用計算機MDGRAPE-4の開発にも協力しており、その成果を基盤技術として展開していきます。これにより、コンパクト・安価でありながら「京」のような計算機でもできないような計算を実現していくことが目標です。
(泰地 真弘人)
2012年11月30日発行