「京」のあゆみ -その3-
「京」のあゆみ -その3-
前号では「京」の搬入までを紹介しましたが、
実は、完成に向けてまだまだやることがあります。
今号では、製造開始後に行われた試験利用と
「京」の運用について紹介します。
2010年9月29日に最初の筐体が搬入されました。しかし、「京」を動かすためにはソフトウェアが必要です。ソフトウェアには、オペレーティングシステム(OS)、プログラミング言語コンパイラ、皆でシステムを共有して使えるようにするためのジョブスケジューラなどのシステムソフトウェアや、実際に科学的成果を生み出すためのアプリケーションなどがあります。これらは、「京」の製造前から開発が進められていましたが、実際に目標の成果を生み出すためには、「京」の本体上での開発、試験が不可欠です。ましてや世界で初めての規模である「京」は、搬入・設置中の計算科学研究機構にしかありませんでした。
こうして、まだ工場で製造段階の2011年4月から2012年9月末の共用開始まで、「京」の一部を用いてソフトウェアの開発が行われてきました。 当時は「京」の機能や使える規模など多くの制限もありましたが、完成度が高いアプリケーションから順次、大規模で計算できるテスト環境の提供を行った結果、共用開始にあわせて40本近いアプリケーションが大並列で実行できる準備が整いました。
試験利用と並行して製造と搬入も進められ、2012年6月にはついに全システムの完成を迎えました。そして、2012年9月28日15:00、「京」の共用が開始されました。奇しくもこの日は、「スーパーコンピュータの父」と称される故シーモア・クレイの誕生日です。
2012年11月には、米国ソルトレークで開催された国際会議SC 2012において、「京」を用いたダークマターシミュレーションがゴードン・ベル賞を受賞しました。 LINPACKの実効性能で「京」を上回るスーパーコンピュータを使った米国の研究グループを抑えての受賞は、日本の研究グループの優れた計算法と京の性能が高く評価されたことによるものだといえます。
2013年1月現在、HPCI戦略プログラムを始めとする約140の課題が「京」を利用し、様々な研究を行っています。今後、「京」を用いたさらに多くの成果が出てくることでしょう。みなさんも、これからの「京」の活躍にご期待ください!
(運用技術部門 システム運転技術チーム 村井 均
ソフトウェア技術チーム 黒田 明義)
2013年3月15日発行