ポスト「京」が目指すこと
第4回
ポスト「京」が目指すこと
第4回
「京」の計算速度を大きく超えるポスト「京」の開発が進められています。
ポスト「京」ではいったいどんなシミュレーションが行われるのでしょうか。
9つの重点課題からピックアップして紹介します。
社会のニーズに応える付加価値の高い新商品・技術を生み出すために、設計と製造のプロセスに革新をもたらすシミュレーションをポスト「京」で実現します。具体的には、送風機やポンプなどのターボ機械、自動車、航空機などを対象にした設計と、それらの設計を具体化する溶接と炭素繊維強化プラスチック(CFRP)成形のシミュレータを開発します。例えば、自動車の車体の周りやエンジンルーム内の空気の流れ、ハンドル操作と車の運動、車内の騒音などを連携してシミュレーションできる統合設計システムをつくり、設計を少し変えたときに燃費や安全性、快適性などがどう変わるかを何度も高速にシミュレーションして最適設計を実現することが目標です。
宇宙は約138億年前に超高温・超高密度状態のビッグバンから始まりました。宇宙の膨張により温度が下がるにつれて、素粒子のクォークから陽子や中性子がつくられ、陽子と中性子から水素やヘリウムといった軽い元素の原子核ができました。一方、宇宙には正体不明のダークマターが存在し、陽子や原子核など普通の物質の数倍あることが分かってきました。まずダークマターが重力によって集まり、そこに普通の物質が引き寄せられて星や銀河が誕生しました。このような素粒子から宇宙までスケールをまたがる現象の精密な計算を、ポスト「京」で実現します。さらに、その精密計算と大型実験・観測のデータを組み合わせて宇宙の基本法則の手掛かりを見つけ、ダークマターの正体や金などの重い元素がどこでどのように合成されたのかなど、多くの謎が残されている宇宙誕生と進化の解明を目指します。