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スパコン大活躍!
病気の治療とスパコン
博士の説明を聞いてスパコンに興味をもったタイチとれいな。さあ、これから身のまわりでスパコンがどんな風に活躍しているか、実際の例を見ていこう!
心臓が規則正しく動くのはなぜ?
心臓は全身のすみずみに血液を送り出す最も重要な臓器のひとつじゃ。左胸の上に手を当ててみると「ドクン、ドクン」と一定の早さで鼓動しているじゃろう?
心臓には約1秒に1回、規則正しく電気刺激を自ら発している細胞があるんじゃ。その刺激が心臓の筋肉全体に伝わって伸びたり縮んだりする。これが鼓動じゃな。このときの電気の流れをグラフで表したのが心電図じゃ。
なるほど。だから心臓の病気を調べるときに心電図をとるのね。
心臓病の治療法や予防には古くから多くの研究がなされておるが、最新の研究ではスパコンのシミュレーションが取り入れられているんじゃよ。
生きた心臓を再現!
もちろんできるよ!ボクの中に生きた心臓を再現したんだ。
出所:HPCI戦略プログラム分野1 東京大学 久田・杉浦・鷲尾・岡田研究室協力 富士通
これまで心臓の細胞や筋肉ごとにバラバラに行っていたシミュレーションを統合する心臓シミュレータ「UT-Heart(ユーティー・ハート)」を開発したんだ。
この研究のすごいところは、心臓の筋肉を構成する細胞の分子の動きから再現していること。これまでのコンピュータでは、分子レベルからのシミュレーションは計算する量が多すぎて現実的には不可能だった。それがボクの登場によって一挙に解決したのさ。
UT-Heart(ユーティー・ハート)
心臓シミュレータUT-Heartでは細胞内部の分子の動きに始まり、細胞によって構成される筋線維の方向と伸び縮み、臓器としての心臓の動き、全身に血液を送り出すしくみ、さらには血圧や心電図まで、すべてを数値で表わして、これらを一貫して再現する。複雑なメカニズムを同時に再現した世界でも前例のないシミュレーションだ。
この方法で京の全システムを丸1日使い、心臓の鼓動1回分の動きを再現できたんじゃ。
京でさえ丸1日かかるなんて、私たちの心臓はそれだけ複雑な動きをしているのね!
京が登場する前は2年もかかっていたんじゃよ。今その複雑な動きを再現できるようになったのは、本当に画期的なことなんじゃ。将来(しょうらい)は患者(かんじゃ)一人ひとりのデータを心臓シミュレータに入力し、その人の心臓を再現することを目指している。その人にとって最適(さいてき)な治療法を考え出したり、心臓病を予防したりする研究がすすめられているんじゃよ。