理化学研究所 計算科学研究機構

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Science 研究成果

「京」を用いてメタンハイドレートが分解する仕組みを解明

「京」を用いて10万分子以上の大規模なシミュレーションを行い、世界で初めて、メタンハイドレートが分解してメタンが発生するメカニズムを明らかにしました。本研究は岡山大学の研究チームによる成果で、このシミュレーションには、名古屋大学の研究グループが開発したソフトウェア「MODYLAS(モディラス)」が使われています。

メタンハイドレート分解の様子

メタンハイドレートは日本近海の海底に存在し、日本のエネルギー自給率を高めるメタンの資源として期待されています。メタンハイドレートは燃焼時のCO2排出量が少ないため、次世代のクリーンエネルギーとして注目されています。現在、海底でメタンハイドレートを分解してメタンを取り出す方法が盛んに模索されています。

メタンハイドレートは、メタン1分子が水分子に囲まれて閉じ込められた構造(籠構造)を持っています(図1)。ハイドレートが分解した後には籠構造が崩れて、メタンガスが分離します(図2)。シミュレーションの詳細な解析の結果、ハイドレートが分解する過程ではメタンが過度に溶けこんだ状態(過飽和状態)が存在し、メタンの気泡が生じやすい状態にすることで分解を促進できることが分かりました。一方で、泡が生じにくい環境にすることで、ハイドレートが分解する温度になっても分解しにくい状態(準安定状態)をつくることができると考えられます。

この現象はこれまでの小規模な計算機では検証できず、「京」の利用によって世界で初めて明らかにされました。実験だけではメタンハイドレートの詳しい性質を調べることは困難ですが、シミュレーションを用いた解析で正確に予測することに成功しました。

本研究結果は、気泡の発生をコントロールすることでメタンハイドレートの分解を制御できる可能性を示しており、実験が困難であるメタンガスの効率的な採取方法の研究開発に応用できることが期待されます。

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岡山大学プレスリリース

参考ページ

torrent No.7 日本語版「水素・メタンハイドレートの生成、融解機構と熱力学的安定性」
torrent No.7 日本語版 「メタンハイドレート分解過程の微視的機構」


図1 メタンハイドレートの籠構造(岡山大学プレスリリースより改変)
水分子が集まってできた籠構造の中心にメタン分子が1個ずつ入って、メタンハイドレートができる。

図2 メタンハイドレートの分解の様子(岡山大学プレスリリースより改変)
メタンハイドレートの籠構造が崩れて、メタンの気泡が生じている様子が、
「京」を用いたシミュレーションで再現された。