第3回 スパコンを知る集い in 松江 〜「京」、そしてその先へ〜 開催報告 (2015年2月15日)
2015年2月15日(日)に「スパコンを知る集い in 松江」を松江テルサ/テルサホール( 島根県松江市朝日町478-18 )において開催しました。
今回、106名の方にご参加いただきました。ありがとうございました。
各講師のプレゼンテーション要旨につきましては、こちらからご覧いただけます。プレゼン資料ついては下記のプログラムの中にPDFファイルで置きましたので、ダウンロードしてご覧ください。
なお、当日回収させていただきましたアンケート調査の結果はこちらをご覧下さい。次回以降の開催の際の参考とさせていただきます。ご協力ありがとうございました。
■概要
- 講演会名:スパコンを知る集い in 松江 ~「京」、そしてその先へ~
- 主 催:理化学研究所 計算科学研究機構
- 後 援:島根県・松江市
- 開催日時:2015年2月15日 日曜日 13時30分~16時(受付13時~)
- 開催場所:松江テルサ/テルサホール
( 島根県松江市朝日町478-18 )
■プログラム
13時30分~13時35分 | 主催者挨拶 平尾 公彦理化学研究所 計算科学研究機構・機構長 |
---|---|
13時35分~13時50分 | 『技術の壁を突き破れ!~スーパーコンピュータ「京」の開発~』(ビデオ)上映 |
13時50分~14時20分 | 参加者からの質問コーナー ■お申込み時にいただいた疑問、質問についてスペシャリストがお答えします |
14時20分~14時35分 | 休憩 |
14時35分~15時05分 | 松本 正和先生 スパコンで水を研究する 松本 正和 岡山大学理学部・准教授 |
15時05分~15時15分 | 質疑応答 |
15時15分~15時45分 |
三好 建正先生 スパコンを使った最先端の天気予報研究 理化学研究所 計算科学研究機構・チームリーダー |
15時45分~15時55分 | 質疑応答 |
15時55分~16時 | エンディング |
■講演要旨
松本 正和
岡山大学理学部
准教授
三好 建正
理化学研究所 計算科学研究機構
チームリーダー
スパコンを使った最先端の天気予報研究
~「京」でゲリラ豪雨に挑む~
「ゲリラ豪雨」が最近目立つようになってきました。青空にみるみる雲がそそり立ち、突然の大雨、突風をもたらします。もし事前に、どこでどんな豪雨が起こるかが分かったら、突発的な「ゲリラ」のように不意を突かれることはなくなります。
日々の天気予報は、気象庁のスーパーコンピュータ(スパコン)で計算されたシミュレーション結果をもとに作られています。地球の大気を細かく分割し、大気の運動方程式や雲や氷などの物理過程を計算してシミュレーションします。
「ゲリラ豪雨」を予測するには、急に発達する積乱雲を、精密にシミュレーションしなければなりません。また、30秒毎の雨雲の分布を捉える次世代レーダーや新しい衛星ひまわり8号など、最新鋭の観測も必要です。この講演では、最高性能のスパコンを使って、シミュレーションと観測の「ビッグデータ」を組み合わせ「ゲリラ豪雨」に挑む、未来の天気予報を切り拓く最先端の研究について紹介します。
■質問コーナーの様子
※皆さまからいただきましたご質問の代表的な回答を、準備ができたものから、ウェブページに公開予定です
■アンケート調査結果
※106名中92名が回答
※各問いをクリックすると拡大します
■お問合せ先
独立行政法人理化学研究所
計算科学研究機構 広報国際室 担当:清田
TEL:078-940-5596
E-mail:shirutsudoi[at]riken.jp([at]を@に修正後お送りください)
URL:http://aics.riken.jp/shirutsudoi
印刷用チラシデータはこちらからダウンロードしていただけます。【pdf 1MB】
スパコンで水を研究する
~シミュレーションによる水・氷・ハイドレートの科学~
私たち分子を研究する者にとって、スーパーコンピュータは、いわば「超」顕微鏡です。分子シミュレーションによって、ひとつひとつの分子を見分けるほどの解像度が得られ、しかも速い分子の動きもゆっくりに見せられます。そして、私が観察している分子は、水です。
水は生命に欠かせない物質であり、地球の環境を支配しています。水分子は数ある分子の中でも最も単純なもののひとつですが、水の性質を詳しく調べていくと、他の物質にはない性質がいくつも見付かります。氷が水に浮かぶ(固体のほうが体積が大きい)、雪を固めて雪ダルマが作れる(氷の表面は氷点下でも融けていてくっつきやすい)、といった性質は、実はそれほど一般的な性質ではありません。これらは、つきつめていくと、分子の集まり方に原因があります。水分子が多数集まることで、どうして変わった性質が生まれてくるのかを、スーパーコンピュータを使って調べています。
新たなエネルギー源として注目されているメタンハイドレートは、メタンと水がいっしょに凍った氷の一種で、見た目にも氷そっくりです。この結晶の中では、水分子でできた玉子のケースのような構造が、メタンを一分子ずつくるみ、莫大な量のメタンガスを含んでいます。これをいかに効率よく分解してメタンをとりだすか、という研究にもスーパーコンピュータが活用されています。
コンピュータの性能が上がることは、超顕微鏡の性能が向上し、観察できる分子数が増え、現象の幅が広がり、解像度が増すことを意味します。世界的に見ても、21世紀以降、水に関するさまざまな未解決問題がこの超顕微鏡によって解き明かされました。その中には氷がどうやって凍るのか、いかに融けるのかといった、基本的かつ普遍的で極めて重要な問題が含まれています。水分子でさえもこうですから、より大きな分子が集まって起こる現象はまだまだ不明な点が多く、超顕微鏡の活躍が大いに期待されます。