機構長メッセージ
- 計算科学研究機構 機構長
平尾 公彦
スーパーコンピュータは現代の科学技術の発展にとって不可欠なツールです。 宇宙や素粒子あるいは生命科学の研究などの基礎科学は言うに及ばず、地球温暖化の科学的予測、地震や津波、集中豪雨や台風の予測による被害軽減、遺伝子治療の基礎となるヒトゲノムの解析やタンパク質の解析によるドラッグデザイン、新しいデバイスや材料のデザイン、自動車の衝突シミュレーションやジェットエンジンの設計など、私たちの生活に直結する最先端の研究開発に欠くことのできないものです。
計算科学研究機構は、コンピュータ・シミュレーションにより、科学的に未来を見通す「予測の科学」の確立を目指し2010年7月に発足しました。スーパーコンピュータ「京(けい)」を運用し、ユーザに対して使いやすい計算環境を提供するとともに、「京」を中核として計算科学分野と計算機科学分野を連携させた研究を行い、先進的成果を創出しています。
「京」は、震災など数々の困難を乗り越え、世界のスーパーコンピュータの性能ランキングTOP500において、2011年6月と11月二期連続で世界一になりました。現在でもGraph500やHPCGなどといった、より実用性を重視した性能ランキングにおいて世界トップクラスの表彰を受けています。その並はずれたスピードやパワーに加え、使いやすさを重視したスーパーコンピュータとして「京」は世界から高い評価を受けています。
現在「京」は基礎研究から産業利用まで幅広い分野の研究で利活用され、国が定めたHPCI戦略プログラムの各分野、また一般利用課題の利用者から、多くの優れた成果が発表されています。また企業との共同研究も活発に行われており、製品化への取り組みも進められています。
私たちは、国内外の各機関、大学、企業の研究者の協力のもと、「京」が持つ能力を最大限に引き出し、我が国の計算科学技術を飛躍的に発展させ、世界をリードしたいと考えています。我が国の科学技術の推進、産業の国際競争力の強化に貢献し、国民と国際社会の期待に応え、世界から人が集まる国際的な知の拠点を目指します。新たな挑戦に果敢に臨み、世界がギクリとする成果、国民がワクワクするような成果を生み出します。
また 私たちは「京」の後継機であるポスト「京」スーパーコンピュータ開発プロジェクトをスタートさせました。2020年頃からの本格稼働を目指しています。計算科学研究機構は「京」の運用・成果創出とポスト「京」の開発というふたつの大きな使命を果たすため、全力をあげて取り組んでいます。引き続きご支援をよろしくお願いいたします。