理化学研究所 計算科学研究機構

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OVERVIEW 計算科学研究機構とは

連続系場の理論研究チーム

計算素粒子物理学に基づく新たな計算科学アルゴリズム・手法の開発と応用

素粒子・原子核の研究はミクロの自然界の極限を究めようとするが、ビッグバン宇宙論を通じて初期宇宙や元素合成論の研究にもつながり、また量子性が本質的な役割を果たす点で原子・分子レベルの物質研究にも通じる点がある。当研究チームでは、素粒子・原子核の基礎理論である格子量子色力学(格子QCD)を中心とした計算科学研究を行っているが、その研究遂行のためには、アルゴリズムや計算手法の改良によって計算機の高い実効性能を追求する必要がある。しかしながら、現在のCPU のメニーコア化やそれ以上の並列化が要求される演算加速器を活用した階層的大規模並列計算機環境のもとでは、従来とは異なるアルゴリズムの開発や計算手法の開拓の必要性が認識されている。これらの課題を克服するために、アルゴリズムの研究開発を行う数値解析・応用数学分野、さらにはソフトウェア技術・計算機システムの研究開発を行う計算機科学分野との連携を図り、計算科学者・計算機科学者・数理科学者が三位一体となった分野横断的研究を推進する。

おもな研究成果

2次元QEDの相構造解析に成功
テンソルネットワーク(TN)スキームは、2000 年代以降、さまざまな分野で理論的・計算科学的研究手法として概念的・実用的側面において急速な発展を見せている。素粒子物理学分野においては、近年、我々のグループが、グラスマンテンソル繰り込み群(GTRG)を用いて1 フレーバーのシュヴィンガーモデル(2次元QED)の相構造解析に成功した。これにより、TN スキームにおいてはモンテカルロ法に内在する符号問題が存在しないこと、およびグラスマン数の直接的取り扱いが可能なことによりフェルミオン場とボソン場に対する計算コストが同等であることが示された。本研究は、ユークリッド時空で定義された相対論的フェルミオン入りゲージ理論への最初の応用例である。さらに、我々はθ項を付加した場合の1 フレーバーのシュヴィンガーモデルの相構造解析も行った。この場合、作用は複素数となるが、理論的考察から予想される相構造を再現することに成功した。
このことは、GTRG 法が複素作用をもつようなシステムにも適用可能であることを意味している。我々が最終目標とする4 次元格子QCDは、相対論的フェルミオンを含むSU(3) 非可換ゲージ理論であるため、現在はその目標へ向かって2 次元を超えた高次元モデルに対するTN スキームの応用を試みている。

θ項を付加した場合の1フレーバーシュヴィンガーモデルにおける相構造

チームリーダー藏増嘉伸

チームリーダー
藏増 嘉伸(くらまし よしのぶ)

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アニュアルレポートRIKEN AICS Annual Report
FY2015
(PDF 884KB)
FY2014
(PDF 431KB)
FY2013
(PDF 330KB)
FY2012
(PDF 488KB)
FY2011
(PDF 545KB)