- 1999
東京大学大学院工学系研究科修了、博士(工学) - 1999
地球フロンティア研究システム(後の地球フロンティア研究センター) 研究員 - 2007
地球フロンティア研究センター(現 海洋研究開発機構)主任研究員 - 2011
AICS 複合系気候科学研究チーム チームリーダー(現職)
複合系気候科学研究チーム
渦解像気候計算の全球適用に向けた気候科学研究と数値気象ライブラリの開発
「京」に代表される大型計算機の出現により、1kmを切る格子サイズの全球雲解像モデルによる、地球全体の大気のシミュレーションが可能となった。一方で、全球雲解像モデルでは、大気の運動や雲の生成に影響する「格子サイズよりも小さな現象」を直接計算することができないため、これらに伴う計算結果の不確実性を軽減すべく、更なるモデル化を行っている。それは計算結果の不確定性につながる。将来的には、より確実な指導原理に基づく全球渦解像モデルに移行していくことで、モデル化の違いによる不確定性は低減すると見込まれる。しかしながら、将来の全球渦解像計算への道のりはまだ遠く、次のような課題を克服しなければならない。渦解像スキームにおける解像度依存性の把握と解の収束性の検証、実際の大気を対象とした計算のための新たな理論やスキームの構築、各物理過程の精緻化と高速計算アルゴリズムの開発、大規模計算の解析のためのポスト処理ライブラリの開発などである。我々は、全球渦解像計算実現へ向けて、理想的な状況下における雲の階層構造や気候学的多重平衡解の探索、実際の現象を対象とした地域気候研究といった複数の科学的課題に取り組んでいく。
おもな研究成果
超高解像度全球大気シミュレーションで積乱雲をリアルに表現
我々は、全球雲解像モデルを用いて、水平格子サイズ1kmを切る解像度での全球大気のシミュレーションを世界で初めて行った。高い空間解像度での実験を行うことで、積乱雲などの対流を複数の格子で表現できるようになった。格子サイズが2km 以下となると、モデルの中で再現される積乱雲が現実に近づき、再現性が向上することが示された。この研究により、モデル内で雲を直接解像することが可能となったが、さらに結果の不確定性を排除し、現象の収束性を示すためには、より高い解像度での渦解像モデルによる研究に取り組んでいく必要がある。
格子間隔870mでの全球大気シミュレーション