HPCI戦略プログラム(戦略5分野)について

「京」を最大限活用し、科学技術のブレイクスルーに挑むため、2011年4月に文部科学省「HPCI戦略プログラム」、通称「戦略5分野」が発足しました。このプロジェクトには、研究機関や大学に加え、企業なども多く参加し、その研究活動は、基礎研究から産業利用まで幅広い分野で大きな成果を生みだしました。
戦略5分野は、2016年3月にプロジェクトを終了しましたが、多くの研究内容は、「京」の後継機であるポスト「京」の重点課題などとして引き継がれています。
このページでは、戦略5分野の各研究課題の紹介と、成果例として2016年1月29日に開催された『スパコン「京」がひらく社会と科学 シンポジウム「スーパーコンピュータの今とこれから』におけるポスター発表を掲載しています。
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分野5「物質と宇宙の起源と構造」
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課題 |
課題名称 |
「スーパーコンピュータの今とこれから」発表ポスター |
1 |
格子QCDによる物理点でのバリオン間相互作用の決定 |
PDF (3.7MB) |
【格子QCD計算によるクォーク質量の精密決定】 原子核を構成する陽子や中性子は、3つのクォークからできています。クォークは常に3つあるいは2つがセットになった状態で存在し、一つだけ取り出すことができません。そのため、クォークの質量を測ることはとても困難です。クォークに働く力や質量は、量子色力学の方程式で表すことができます。ところが、この方程式を解くには超高性能のスパコンが必要です。そこで「京」を使って計算した結果、実験による測定結果と矛盾がない質量の値を導くことができました。 |
2 |
大規模量子多体計算による核物性解明とその応用 |
PDF (0.4MB) |
【モンテカルロ殻模型による核変換に向けた原子核構造の基礎研究】 核分裂反応によって生じる人工的な核種(原子核)のうち、寿命が数10年~数100万年と長いものは長寿命核分裂生成物と呼ばれます。これらは長期的に放射線を出し続けることになるため、短い寿命の核種に変えることで安全度を高める「核変換」の可能性が議論されています。そこで、大規模量子多体計算により原子核の構造を精密に調べることで、核変換に関する基礎的な知識を得る研究がいま始まりました。 |
3 |
超新星爆発およびブラックホール誕生過程の解明 |
PDF (0.5MB)
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【「京」でブラックホールを創る】 重力波は、アインシュタインの一般相対性理論により、時空のさざなみであることが知られています。重力波源の候補はいくつかあり、2016年2月に観測成功と発表されたのはブラックホール連星でした。もう一つ重要な重力波源に、連星中性子星合体があります。中性子星は、太陽の黒点の1億~1兆倍もの磁場を持っている天体で、合体時にどんな現象が起こるかはよくわかっていません。そこで「京」を使って大規模シミュレーションした結果、合体時に起こる磁場の増幅がどのような過程を経ているのかを解明することができました。
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4 |
ダークマターの密度ゆらぎから生まれる第1世代天体形成 |
PDF (1.8MB) |
【世代天体形成 ダークマターシミュレーション】 宇宙には、私たちが直接見ている物質(バリオン)の他に、ダークマターとよばれる物質が質量で5倍程度存在するといわれており、宇宙の重力的な構造形成、進化の主要な役割を果たしています。ところが、まさに宇宙サイズの重力計算が必要になるため、くわしい進化過程はわかっていませんでした。そこで「京」を使い、一辺の大きさが最大で54億光年という巨大な空間を用意。約5500億個ものダークマター粒子をセットして、宇宙誕生初期から現在にいたる重力進化を計算することに成功しました。 |
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