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Science 研究成果

研究成果 ピックアップ

研究成果事例をピックアップして紹介します。
※「京」、ポスト「京」関連の研究成果については、理研以外の研究機関による成果も含まれます。
※成果の最新情報については、新着情報もあわせてご覧ください。

2015年07月29日更新

2つの中性子星の合体とブラックホールの進化過程に新解釈
~「京」で磁場が増える仕組みを解明~

ブラックホールの成り立ちには分かっていない事が多く、その解明に多くの研究者が取り組んでいます。ブラックホールが作られる原因はいくつか考えられていて、その一つに中性子星(※)の合体があります。2つの中性子星は重力波の発生により合体しますが、磁場の影響も大きく受けています。このため、ブラックホールの成り立ちや進化を探るためには、磁場の変化を調べる事が重要です。研究チームは中性子星がもつ磁場に着目し、「京」を用い、合体時の磁気の流れのシミュレーションを世界最高の解像度で行いました。従来は、合体後に形成されるブラックホールの周りのガス円盤の中で磁場が増えるとされていましたが、その前の過程で磁場が増える仕組みを明らかにすることができました。

※中性子星…中性子を主成分とする極めて高密度な天体。太陽のおよそ 10 倍以上の質量をもつ恒星が超新星爆発を起こした後、その中心核から作られる。1cm3あたり10億トンという超高密度になる。

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京都大学プレスリリース

2015年04月30日更新

世界最高の解像度で太陽の対流層を計算
~太陽の黒点が生成される仕組みの研究や、太陽活動の変化を予測するために役立つと期待~

太陽は地球上の生命にとってなくてはならない存在で、太陽の活動は私たちの生活に大きな影響を与えます。その太陽の中心部では核融合と呼ばれる現象でエネルギーが生成されます。中心に近い層(半径の7割まで)は、光でエネルギーが運ばれ「放射層」と呼ばれます。表面に近い層(半径の7割から表面まで)は、熱対流でエネルギーが運ばれるので「対流層」と呼ばれます。太陽の対流層では、流れが乱れる現象(乱流)が数多く起きています。太陽で発生しているエネルギーの流れや磁場の生成を理解するためには、乱流をシミュレーションで再現することが重要です。今回「京」を用いて、世界最高(従来の6倍以上)の解像度で、乱流を含む太陽の熱対流の計算を行うことができました。これにより、今後は太陽の黒点が生成される仕組みを詳しく調べたり、太陽の活動の変化を予測するために大いに役立つと期待されます。

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東京大学理学部プレスリリース

参考資料

東京大学大学院理学系研究科 堀田英之博士プレスリリース資料

2015年04月21日更新

スパコンで高解像度の津波モデルを用いてリアルタイムに浸水を解析
~津波警報を高度化し、災害に強い都市づくりに貢献~

東日本大震災の際には、地震発生から3分後に出された津波の高さの予報値を実際よりも低く見積もっており、リアルタイムでの推定方法に大きな課題が残りました。また、津波の高さだけではなく浸水範囲などの情報の必要性も指摘されました。今回、東北大学と富士通研究所の研究チームは、従来よりも解像度の高い(5メートル四方の単位で見分けられる)津波モデルを開発しました。地震発生時の観測データから推定される津波の発生源を入力することで、短時間で津波の浸水状況を予測可能です。このモデルを「京」で実施・検証したところ、従来ワークステーション(研究開発用のコンピュータ)で数日を要した計算が、数分以内に完了できることが分かりました。本技術を用いると津波の浸水状況をリアルタイムにかつ詳細に予測できるため、より適切な災害対策が期待されます。

※津波モデル…シミュレーションを用いて津波を解析するためには、津波が起こる様子を数式を使って表す必要がある。津波を表すための数式の集まりを「津波モデル」という。

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JAMSTECプレスリリース

東北大学プレスリリース

富士通研究所プレスリリース

2015年04月21日更新

スーパーコンピュータ「京」で大型施設の丸ごとシミュレーションに成功
~国内外の耐震性の高いインフラ整備に貢献~

石油プラントなどの機器や配管を支える構造体は色々な部材、つまり複数の部品でできています。従来は鋼材となる部品を一本の直線で表現して計算していたため、構造体全体と部品の詳細な動きなどを同時に解析できませんでした。原子力研究開発機構と千代田化工建設の研究チームは、建物の揺れを継手という細かい部品から全体まで総合的に解析する「組立構造解析」技術を開発してきました。今回、「京」と「組立構造解析」技術を用いて、数多くの部品から組立てられたプラントを丸ごとシミュレーションすることに成功しました。この結果、構造体全体の解析と、機器や部品同士のつなぎ目の解析、部品を差し替えて軽量化した場合の耐震性の評価を複数同時に行うことを可能にしました。今後はこの成果をより安定性の高い施設や機器の開発・設計に活かし、国内外の耐震性の高いインフラ整備に貢献していきます。

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日本原子力研究開発機構プレスリリース

千代田化工建設プレスリリース

2015年04月21日更新

「京」による大規模な気泡生成シミュレーションに成功
~シャンパンの気泡同士に働く力の解明により、さまざまな工業分野への応用に期待!~

シャンパンや炭酸飲料の栓を空けると、たくさんの泡が出ますが、その後、大きい泡がより大きく、小さい泡がより小さくなる「オストワルド成長」という現象が起きます。研究チームはこの現象を「京」を用いて7億個の粒子を使って再現し、気泡が発生する最初の過程のミクロな様子を世界で初めて明らかにしました。この結果、時間に伴って気泡の数が変化する様子が、理論による予想と一致することが分かりました。この結果を用いるとシミュレーションによって、気泡の発生や成長、気泡同士に働く力を分子レベルから明らかにすることが可能になり、発電所のタービン(※)や船舶のスクリューの設計、金属合金の生産など、さまざまな工業分野への応用に貢献すると期待されます。

※発電タービンの多くでは、水を蒸気に変えるのにボイラーを使用しています。ボイラーの中では、水から蒸気に変わるときに沸騰(温度を上げることにより起きる発泡現象)が起きていて、ボイラーやタービンの動作効率に大きな影響を与えます。気泡発生の仕組みを調べることで、発電効率の高い発電所の設計につなげることができると期待されます。

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CMSIニュース

AIPニュース(英語)

2015年04月21日更新

「京」を用いて巨大分子の第一原理シミュレーションを実現
~創薬や次世代デバイスの開発に期待~

物質は多くの原子からなります。その振る舞いは原子同士に働く力や電子によって決まり、「量子力学」によって表すことができます。量子力学に基づく第一原理計算は現象を原子や電子のレベルで明らかにできますが、複雑で大規模な計算が必要となるため、計算可能な原子数が極めて小さい(通常数百原子程度)という問題がありました。物質・材料研究機構と英国ロンドン大学の研究チームは「京」と東京大学のスパコンFX10(※)を用いて、原子数が3万個以上においても第一原理計算を可能とする新しい計算手法を開発、高精度のシミュレーションに成功しました。今後は数万~数百万原子から構成される生体分子やナノサイズの構造を持つ物質の原子・電子の振る舞いなどを明らかにすることを目指します。本研究は創薬や次世代デバイスの開発に役立つことが期待されます。

※FX10…「京」をベースにして開発された商用版のスーパーコンピュータ。

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物質・材料研究機構プレスリリース

2015年04月21日更新

スーパーコンピュータ「京」がGraph500で1位を獲得

スーパーコンピュータ「京」がGraph500で1位を獲得しました。この指標は、グラフ解析という解析の性能を競う、新たなスパコンのランキングです。グラフ解析は、サイバーセキュリティー、医療情報、ソーシャルネットワーク等、様々な場面で利用されています。Graph500では、グラフ(※)の幅優先探索(1秒間にグラフのたどった枝の数(Traversed Edges Per Second; TEPS))という計算を行う速度で、スパコンの性能が評価されます。今回、「京」の約2/3(に相当する) 65,536個の計算ノードを用いて、1兆個の“節”と16兆個の“枝”からなる大規模なグラフを、わずか0.98秒で探索しました。その結果、17,977 GTEPS(ギガテップス)というスコアで、「京」は1位を獲得しました。本成果は、「京」が汎用性が高く、ビッグデータ解析を含む幅広い分野のアプリケーションに対応できることを実証するものです。

※グラフ…“節”と呼ばれる2つの点と、その間を繋ぐ線(“枝”と呼ばれる)からなる集合で構成される。データ間の関連性を示す様々な分野で使われている

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理化学研究所トピックス

東京工業大学プレスリリース

2015年04月20日更新

地球全体の大気について、世界最大規模である1万個の「アンサンブルデータ同化」に成功
〜1万キロ離れた場所の観測値を使って、大気の状態を精度よく推定できる可能性も〜

天気予報にはコンピュータシミュレーションが使われています。シミュレーション結果を少しでも現実に近づけるために、実際の観測データを取り入れる手法を「データ同化」と呼びます。その中でも、少しばらつきをもたせた複数のシミュレーション結果を利用する手法が「アンサンブルデータ同化」です。今回「京」の上で新しいソフトウェア(*1)を使用することで、従来100個程だったアンサンブルデータを世界最大規模の10,240個に増やし、地球全体の大気のデータ同化を3週間分行うことに成功しました。計算量は従来の100万倍(*2)となりました。今回の結果から、例えば日本から1万キロ離れた地点の観測値を有効に使い、日本の天気予報の誤差を減らせる可能性などもあり、今後の天気予報シミュレーションの改善への貢献が期待されます。

*1 アンサンブルデータ同化計算ソフトLETKFと、高性能固有値計算ソフトEigenExa(アイゲンエクサ)を利用
*2 固有値計算部分。従来100個のアンサンブルを100倍の1万個に増やすことで、その3乗の100万倍の計算量となる

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理化学研究所プレスリリース

2014年11月20日更新

「京」が新たなスパコン性能指標 「HPCG」で世界トップレベルの高性能を達成
~産業利用など実際のアプリケーションにおける高い性能を証明~

世界のスパコン関係者が集まる国際会議SC14で、スパコンの性能を評価する新しい性能指標(ベンチマーク)により、「京」が世界トップレベルの高いスコアを達成しました。この新しい「HPCG」ベンチマークは、いろいろなアプリケーションで良く使われる計算手法(共役勾配法)の処理速度を評価するものです。今回の結果は「京」が産業利用など実際のアプリケーションにおいても高い性能を発揮できることを意味します。「HPCG」は、世界ランキングTOP500で使用されていた「LINPACK」と並ぶ新しい指標として期待が集まっています。

詳細説明

解説を読む

参考ページ

HPCG(英語)

SC14(英語)

2014年08月29日更新

高解像度大気海洋結合モデルにより台風強度の予測精度が大きく向上することを京コンピュータを用いた大規模実験により実証

台風の予報精度を向上させることは防災の観点から非常に重要です。しかし、中心気圧や最大風速で表される台風の強度の予報は、過去20年間であまり改善していません。この問題を解決するには、システムの 高解像度化を進め台風中心付近の詳細な構造と海洋内部の変動を正確に予測することが必要と考えられていましたが、計算機資源の問題もあり、信頼できる精度評価は行われてきませんでした。本研究では、高解像度で大気と海洋の状態を予測するシステムを新たに開発し、京を用いて、281回の予報実験を行いました。その結果、このシステムを用いると従来のシステムに比べて大きく強度予報の誤差が減ることが分かりました。

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